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最後の闘牛

10月も中旬を過ぎてようやく秋らしい気候に移りそうな気配がみえてきました。今年の夏はスペイン全土で雨が少なく、東部の湿地帯が乾いてしまったというニュースを見ました。ここマドリッドでは、最後に傘が必要だったのがいつだったか、思い出せないくらい雨が降っていません。空気もカラカラに乾いています。

毎年、この時期に行われているアストゥリアス皇太子賞の授与式が、10月28日金曜日、アストゥリアス州のオビエドで行われます。この賞には、芸術や文学、スポーツなどいくつかの部門があり、今年の平和部門で福島第一原発の事故処理にあたった作業員、消防士、自衛官たちが、「フクシマのヒーロー達」として受賞しました。アストゥリアス皇太子賞の公式HPをご覧下さい。http://www.fpa.es/especial-premios-2011/im%C3%A1genes-premiados-2011/heroes-de-fukushima 他の受賞者はほとんど笑顔ですが、未だに多くの問題を抱えている福島第一原発事故に関して受賞したこの方たちはさすがにニコニコ顔で登場することはできなかったようですね。

前回の投稿で、アルバ公爵の再婚について書きましたが、その前にあったスペインの重要ニュースのひとつを今日は話題にしたいと思います。

9月の最終日曜日、25日に、バルセロナにあるモヌメンタル闘牛場で最後の闘牛が行われました。カタルーニャ自治州議会が2010年7月に動物愛護の観点から闘牛を禁止する法律が可決され、それが2012年から施行されるので、今年のシーズン最終の闘牛が、バルセロナにおける闘牛の最後となったわけです。

最後の闘牛ではホセ・トマスを含むスペインを代表する闘牛士が登場し、約2万人の観客でかなり盛り上がったということです。闘牛が終わった後は、闘牛場の外に集まった、闘牛禁止を悲しむ闘牛愛好者と禁止を喜ぶ動物愛護団体の人々の間で一時緊張が高まる場面がありました。現在の闘牛のような形になってからも約300年もつづいている伝統を大切にするのか、あるいは動物を愛護するべきだという主張が正しいのか。全く相容れない二つの考えは平行線のままで、歩み寄りできそうにもない難しい問題です。

スペインのテレビニュースなどでは、カタルーニャ地方で闘牛禁止法が可決されたのは、ただ動物愛護のためだけではないだろうとの見方をしているようです。カタルーニャ地方は、スペインの一州ですが、「スペインとは一緒にしてくれるなよ」的な考えの表れとの捕らえ方をしている人も多いです。このコラムで、サッカーの話題も何回か取り上げておりますが、バルサファンのレアルマドリッドに対する気持ちは、例えば、阪神ファンの巨人嫌い以上のものがあるように思われます。

それを証明することの一つとして、カタルーニャ地方に伝わる、Correbousという祭りがまだ続いていることが挙げられるでしょう。それは、角に火をつけて荒れ狂う雄牛を放ち、それを楽しむという祭りです。動物愛護のためならこんな残酷なことはとっくに廃止していたはずです。もちろん、このお祭りの廃止を呼びかけている人々もたくさんいます。

correbous.jpg

日本では、スペインと言えば、「フラメンコ」「闘牛」というイメージを持つ方が多いですね。でも、スペイン全土が「私達はスペイン人だ!」と盛り上がっているわけではないこと、「闘牛、最高!」と考えていないこと、を今日の投稿で分かっていただけたのではないでしょうか。

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2011年10月21日 00:50に投稿されたエントリーのページです。

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